フライト“ホラー”シューティング 『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』

mrbird.hatenablog.com

こんな名エントリの前では何を書いても蛇足になるんだけども……。
いや蛇足というよりもうコバンザメみたいなエントリなんだけども……。

 

 

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エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』は本当に怖い作品だった。

エントリ名の通り、ホラーゲームと言ってもいい。

この作品に満ちている怖さとは、冒頭の記事でid:mehoso氏が解説していた「空を飛ぶこと」の恐怖にとどまらない。

誰が味方で誰が敵かわからない恐怖。

自分のやっていることが正しいのかわからない恐怖。

自分の向かうべき場所も、向かっている先もわからない恐怖。

今のこの世界を支えているのが
情報的な見通しの良さなのであれば
それが潰えた

劇中のこの台詞の通りだ。

本作でプレイヤーが空間識失調に陥るのは、フライト中だけではない。『04』や『X』の鮮やかな英雄譚も、『5』のような二大国全面衝突のノスタルジーもなく、代わりに、わからないこと――アンノウンばかりが物語を埋め尽くす。いくつミッションを終えても、プレイヤーは雲の中から抜け出すことはできない。

ミッション4やミッション15で味わわされるのは、異常な強さの無人機の襲撃を受けたり、力及ばず僚機を喪ったり、相手側の重く哀しい事情が明らかになったりといった、従来型の脅威――「エースとして活躍する自分の前に立ちふさがる強敵/挫折/葛藤」とは、明らかに異質なショックだ。
あんなに元気よく空を飛びまわり、次から次へと敵を撃墜していたはずの自分が、いつからか「攻撃すること」にどこかで恐怖を覚え始める。ためらいとかではなく、まさに恐怖だ。
これまでのシリーズ作品同様の、わかりやすく爽快なエース体験を予想していた身としては、いつも通りに「俺TUEEEEEE」気分を盛り上げておきながらしばしば容赦なく冷や水をぶっかけてくる本作の構造に驚かされた。

mehoso氏が着目していた、フライト中の視界悪化や乱気流の再現も、もちろん「よりリアルなフライト体験」の追求だけで生まれたものではないはずだ。
エースコンバット7』は、本当に徹底して、「アンノウン」の恐怖を描いた。それはプレイ面のみならずストーリー面にも及んでいる。

言うまでもなく、シリーズ従来の魅力――空をはじめとするステージのグラフィックや、敵機の破壊描写、何より数々の戦闘機のリアルな再現といったものはもちろん維持されており、順当に発展を遂げている。
しかし本作はさらにそこへ「恐怖」という新たな要素を持ち込み、もはや変異と呼ぶべきかもしれない進化を遂げた。
ホラーゲームとして同時期発売の『バイオハザード RE:2』ともタメを張れるかもしれない。誰も予想しなかった、“爽快で怖い”フライトシューティングゲームの誕生だ。

 

 

 

 

 

以下、ネタバレ注意。

だからこそ、物語終盤の「みんな集まれ!」「これですべてが解決する!」「手を取り合おう!」みたいな駆け足の締めくくりはどうにかならなかったのか…とひっかかる。
ここまでズタズタに分断された空がどういう風につながるんだ?とワクワクしてたのに……まあだからこその「灯台」なんだろうけども。
だって、大陸中に分散した二国の軍隊が、連絡網を破壊されて、連携も指揮も不可能になって、敵味方の区別もつけられなくなって、そこへ再独立を狙う過激派がそこかしこで蹶起して、そんな恐ろしい事態があんな感じで収まるの?マジで??
……と、物語の畳み方にはちょっとならず違和感があった。

あと、プレイするうえでのストレスが多いのも事実。天候とか乱気流みたいな新要素とは別に、もっとしょぼい次元で
特にロックオンの仕様。大量の敵機を一度に出現させてるのはそりゃあすごい進化だけど、それに対してロックオンが結局「ボタンを押すごとに順に切り替え」のままだったのは何とも……アーセナルバード戦とか、TGTに切り替えるのに手間がかかりまくってもうイライラしてしょうがなかった。せめてTGTを優先的にロックする機能とか付け足してくれなかったものか。
ヘリボーンする味方を支援するミッションでTGT表示がなかったのも鬱陶しかった。あんなに敵が大量にいる中で「早めに撃破しないとゲームオーバーになる敵」なんか混ぜ込まれたらわからんって。
それともこれも「アンノウン」というテーマの表現のひとつ?……いや、ただイライラするだけのアンノウン要素はいらなかった、ホントに。