【微ネタバレ】『シン・ゴジラ』が提示した新ゴジラに感動した

シン・ゴジラ』のゴジラに関するネタバレを若干含みます。
ストーリーなどのネタバレはありませんが、ご注意ください。

正直言って難点はいろいろありますが、それをすべて帳消しにしてしまうほどのパワーを持った傑作でした。
未見の方はぜひ見に行ってください。

 

ゴジラ ムービーモンスターシリーズ ゴジラ2016

ゴジラ ムービーモンスターシリーズ ゴジラ2016

 

安いのになかなかの出来栄えでかっこよくて怖くて可愛い。
魔除けとかにも使えそう。

 

2001年の『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』で、金子修介ゴジラを「太平洋戦争で殺されたすべての人の怨念」と解釈した。

私は、ゴジラというキャラの解釈として、これ以上のものは出てこないだろうな、とこれまで思っていた。

(個々の設定は違えど)『大怪獣総攻撃』までの46年間、ゴジラは執拗に日本だけをターゲットにしてきた。
だって日本のキャラだもの。「今度のゴジラジャカルタで大暴れ!」みたいなキャッチコピーの作品が、国内で売れるわけがない(実際やってみたらどうなるか知らんけど)。
ゴジラは日本ばかり襲う。
それが、ゴジラシリーズの製作上のお約束だ。

金子氏はそれを逆手に取った。
終戦後まもなくして出現し、以来、日本だけを執拗に狙う。そんな怪物がいるとすれば、あの戦争と関わっているとしか考えられない。
そうして「戦争の怨念」としてのゴジラが出来上がった。
「核の脅威」を背負う怪物として生まれたゴジラは、「太平洋戦争の亡霊」という新たな役割を担うようになったのだ。

 

1998年の『GODZILLA』での解釈にはケチをつけたシリーズファンも、この解釈には(おおむね)ケチをつけなかった。
それは、私と一緒で、この解釈がとにかく「しっくりきた」ファンが多かったからだと思う。
GODZILLA』が、放射能浴びて巨大化すりゃなんでもゴジラだろってな適当な解釈だったのに対して、『大怪獣総攻撃』は46年間ゴジラが積み上げてきたキャラクター性を丁寧に分析したうえでの新しい解釈を示した(それもこれも、数十年に渡って怪獣を愛し続けてきた金子氏の手腕と愛情あってこそだが)。

だから、みんな納得したのだ。

私に至っては、これ以上にゴジラというキャラにしっくりくる解釈が、浮かばなくなった。
ゴジラは「核」や「あの戦争」を背負わなくてはならないキャラなのだ、と思うようになった。

 

 

 

 

15年が経って、今回の『シン・ゴジラ』がやってきた(ここからメインです)。

シン・ゴジラ音楽集

シン・ゴジラ音楽集

 

暴れまわるゴジラを見ていて、ああ、そうか、と納得した。
目から鱗だった。

シンゴジラはもう、人類の因果を超越していた。
人類が核をもてあそんだから、日本人があの戦争を忘れてしまったから、現れるのではない。
ただ現れて、ただ暴れるのだ。
そこに理由を用意してくれるほど優しい存在ではなくなっていた。

そうだよなあ、こんなゴジラでもよかったんだよなあ、と、鑑賞後はひたすら感心していた。
というのも、『シン・ゴジラ』の製作が決まったと知ったとき、てっきり私は、福島第一原発ゴジラを絡めた解釈になるんだろうと考えていた。日本が犯した最悪の過ちのひとつであるあの原発事故を、ゴジラは背負わなくてはならない、と勝手に思っていた。「核の脅威の化身」として生み出されたキャラに敬意を払うなら、その解釈が当然だろう、と。
まあ正直今でも、その方向での和製ゴジラはそれはそれでぜひ観てみたいと思っている。

でも、庵野秀明はそうしなかった。
ゴジラを人類や日本人の所業に絡めなきゃいけない理由はどこにもない、と氏はわかっていたのだ。
ゴジラは、意味も筋合いもなく襲ってくる「災害」を背負って立つことも出来たのだ。

なぜゴジラは襲ってきたのか。なぜ我々はこんな目に遭うのか。
『大怪獣総攻撃』などのゴジラ映画は、その「なぜ」の問いかけに答えた作品だったが、そんな、後でどうとでも出来る問答は、この映画では為されない。
脅威が襲ってきた、だから何とか乗り越える。その二つだけが描かれる。
混乱と戦いそのものにフォーカスを当てるゴジラ映画となったわけだ。

 

これを観た今では、ゴジラを「核の化身」「戦争の亡霊」と解釈し、人類の因果と位置付けること自体がひどく矮小なものに思えてしまう。
まして「中国や韓国が日本へ侵攻してくる姿」を読み取るぷざけた解釈なんか、ゴミもゴミ、といった感じだ。松尾愉の演技ぐらいゴミだ。
今回のゴジラはそんなちっぽけな存在ではないのだ。 

どうせ『巨神兵東京に現る』みたいな出来で終わるんだろうと思っていた私があほでした。
このゴジラを見せてくれた庵野氏には心から感謝します。
シン・ゴジラ』のゴジラ、最高でした

 

 

 

ゴジラはな。